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小児によく見られる感染症

Pediatrics

Pediatrics小児によく見られる感染症

1. 小児によく見られる感染症
ヘルパンギーナ
手足口病
アデノウイルス感染症
溶連菌感染症
急性扁桃炎
頚部リンパ節炎
2. 急性気管支炎
クループ症候群
インフルエンザ(A, B型)
百日咳
3. 細菌性、ウイルス性肺炎
マイコプラズマ肺炎
細菌性肺炎
ウイルス性肺炎
RSウイルス感染症・急性細気管支炎
クラミジア肺炎
新型コロナウイルス肺炎

1.小児によく見られる感染症

ヘルパンギーナ

流行が夏であり、且つ、口腔粘膜、軟口蓋に複数の水疱が出る、発熱を伴うウイルス感染症です(コクサッキーA, B群、エコーウイルス)。手足口病と症状が似ていますが、手足には発疹や水疱は出ません。また、39~40度の高熱が突然出ます。

手足口病

夏風邪の一種で、手、足、口の中に水疱ができるのが特徴です。
生後6か月くらいから、4~5才頃の乳児に多いウイルス感染症(コクサッキーA6, A16, エンテロ71)です。せきや唾液などの飛沫感染のほか、便からもウイルスが排泄され、経口感染します。
潜伏期間は3~5日程度。手のひら、足の裏、口の中に、周辺が赤い数ミリ大の水疱が複数、出現します。足甲や臀部に出ることもあります。痛みやかゆみはあっても軽度です。
発熱は37~38度くらいが多く、1~2日で、大抵解熱します。ときに嘔吐や下痢を伴います。

※手足口病、ヘルパンギーナでは咽頭の疼痛(痛み)により、経口摂取が不良になる場合があります。軽症の場合は、発熱・疼痛を解熱鎮痛剤で緩和し、脱水にならないよう、アクア飲料や麦茶でケアすることが大切です。

アデノウイルス感染症

アデノウイルスによる感染症で、38~40度の高熱が5日前後持続します。眼球充血、咽頭痛、扁桃肥大、顔面の紅潮、唇の発赤を伴い、皮膚の紅斑を認めることもあり、溶連菌感染や川崎病との鑑別が必要です。外来で咽頭ぬぐい液迅速診断が可能です。消耗や脱水により輸液や入院加療が必要になることもあります。気管支炎、肺炎、胃腸炎を併発することがあり、症状に応じた治療が必要です。夏場に流行るのでプール熱と呼ばれたりしましたが、近年では冬場にも見られます。

溶連菌感染症

A群β溶血性連鎖球菌による感染症です。飛沫感染です。発熱、咽頭痛、イチゴ舌、頭痛、寒気、倦怠感、ツブツブ~蕁麻疹様の発赤疹を呈します。2歳以上~学童期に好発、流行もありかつ繰り返し罹患することがあります。ペニシリン系抗生剤を10日間以上内服します。内服開始後は速やかに解熱傾向となり、1日分の抗生剤内服で飛沫感染をおこさなくなる菌数に減少するとされます。しかし溶連菌感染後の急性糸球体腎炎やリウマチ熱といった合併症を予防する為に長期間の抗生剤内服を要します。

大人では稀に劇症型溶連菌感染症が報告されており、耐糖能異常など免疫低下が懸念される患者さんには注意が必要です。

急性扁桃炎

38℃以上の高熱、咽頭痛、嚥下痛、で発症します。ウイルス性のこともありますが、経験上多くは細菌性と考えます。扁桃の充血、腫大を認め、白苔の付着などを認めます。ペニシリン系もしくはセフェム系抗生剤が著効する場合が多いです。繰り返す場合は細菌培養を提出したりもします。5日以上学校を休むことになるので、年に何度も繰り返す場合は、耳鼻科で扁桃摘出を検討されたりしていましたが、扁桃はリンパ免疫組織であるため最近では抗生剤内服による保存的対応で成長を見守ることが多いです。

頚部リンパ節炎

多くは有痛性の頚部リンパ節腫脹で発症し、38℃以上の発熱や咽頭痛も伴います。扁桃炎を合併していることをよく経験します。悪性リンパ腫や血液疾患などを鑑別する必要があり、血液検査や頚部エコーで精査の上、治療方針を決めます。比較的炎症反応が強いことが多く細菌性の可能性が高いので抗生剤投与が行われます。咽後膿瘍の合併や全身状態が不良な場合は入院治療の適応と考えます。

2. 急性気管支炎

クループ症候群

急性声門喉頭炎とも呼ばれます。バウバウ、オウオウ、ケンケンといった犬やアシカの鳴き声のような犬吠様咳嗽を特徴とします。流涎(よだれ)、嗄声、イビキ、吸気性喘鳴などを伴います。経験上、発熱や気管狭窄、犬吠様咳嗽が夜間に増悪する印象があります。殆どがウイルス感染のため、抗生剤内服は必要しない症例が多く、気道狭窄(浮腫)を改善するためにステロイド内服や吸入が行われます。重症例では窒息、呼吸困難を生じるため注意が必要です。

インフルエンザ(A, B型)

多くの型がよくご存じの通り、インフルエンザウイルスA、B型の感染により発症します。潜伏期は2~4日(1~3日とも)、発熱(37度台後半~40度)、寒気、咽頭痛、頭痛、関節痛、倦怠感、咳嗽、鼻炎、顔面の紅潮、などの症状で発症します。流行性感冒(流感)と呼ばれて来ました。発熱は2相性で、第1の山として2~3日の発熱、その後、半日程度一旦37度台になり、再び第2の山として38度台以上の高熱相となります。
最近は迅速診断キット(感度80%強、偽陰性40%程度とも)で診断されることが多いですが、流行状況や症状から臨床診断されることもあります。
抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ、ラピアクタ等)で治療されます。
急性気管支炎、肺炎、脳炎・脳症を引き起こすリスクがあります。
予防接種で重症化を防ぐことができるとされています。

百日咳

Bordetella pertussis というグラム陰性桿菌の感染が原因でおこる急性気管支炎、肺炎です。血液検査でリンパ球増多を認めるとされます。確定診断には抗体上昇を確認します。

  • 乳幼児での発症が多いですが、近年学童、成人での小流行が報告されます。症状は激しい咳込み、咳による顔面の紅潮、咳込みの後の呼吸苦、が特徴的です。多くは無熱性です。一旦発症して症状が本格化すると、文字通り百日間咳込みが持続するとされます。
  • DPTワクチンで乳児期早期から予防する疾患ですが、ワクチン接種後も百日咳菌感染による気管支炎は認められます。疑わしい時は適切な対応が必要で、マクロライド系抗生剤の内服で治療します。

百日咳菌毒素によると考えられる中枢神経への影響で、乳児が痙攣や無呼吸を起こすことが報告されており、注意が必要です。

2. 細菌性、ウイルス性肺炎

マイコプラズマ肺炎

初期は風邪様の症状で、咽頭痛や咳、鼻水ですが、乾性咳嗽が持続し、やがて微熱から夜間発熱を繰り返すようになります。以前はオリンピックの年に流行するとされていましたが、最近では通年性で毎年のように小流行を起こしているような印象があります。診断には咽頭ぬぐい液の迅速診断や、血清IgM抗体、胸部レントゲン写真が行われますが、症状と周囲の流行状況から強く疑われることがあります。自然治癒する症例もありますが、マクロライド系抗生剤内服が行われることも多いです。近年ではマクロライド耐性株が問題になっています。

細菌性肺炎(肺炎球菌、肺炎桿菌、インフルエンザ桿菌)

風邪症状から始まり、発熱の持続、特に夜間の咳嗽で不眠になるなど徐々に激しくなる咳、食欲低下、活気の減少など全身状態の悪化を伴います。血液検査で炎症反応の増加、胸部レントゲンで浸潤陰影を伴います。軽症は外来での抗生剤内服で対応可能ですが、全身状態が不良な場合は入院の上、抗生剤静注療法が必要です。これらの菌は侵入性が強く容易に血中に入り全身化し、敗血症となるため、細菌性髄膜炎を発症するリスクがあります。

  • 近年では、肺炎球菌やインフルエンザ桿菌のワクチンの普及により、これらの菌による乳幼児の肺炎、髄膜炎症例が減少してきました。

ウイルス性肺炎

インフルエンザウイルス、アデノウイルスなどによる肺炎です。麻疹、風疹、水痘でも起こり得ます。高熱の持続、激しい乾性咳嗽、胸部レントゲンでの間質性陰影(スリガラス様、特に末梢)、換気障害による呼吸苦などが特徴です。最近ではヒトメタニューモ・ウイルス (HMPV) による肺炎が有名ですが、同ウイルス肺炎では湿性咳嗽が多く、必ずしも呼吸状態がそれほど悪化していない印象です。血液検査では寧ろ白血球が減少していたり、炎症反応が強くなかったりと、通常の細菌性肺炎のデータとは異なる場合があります。中等症以上は入院の上、全身管理を行います。呼吸症状や熱型によってはステロイド療法、同パルス療法が必要です。

RSウイルス感染症

◎RSウイルス感染症 乳児期の喘鳴を伴うウイルス性呼吸器感染症です。母胎からの移行抗体のある時期である生後数週から感染を起こし重篤な呼吸器症状を呈します。乳児の末梢気管支は細く気管支平滑筋が未発達なため、炎症により閉鎖性呼吸障害に陥りやすく、気管支拡張剤に不応な傾向があります。この病態を急性細気管支炎と呼びます。肺炎(肺胞の炎症)を起こすこともあります。

  • 現在はワクチンが存在しないため、再感染を繰り返しながら全ての小児が3歳までに抗体を獲得するとされています。 低出生体重児、心肺系基礎疾患、免疫不全があると重症化リスクが高いため、パリビズマブ(商品名シナジス)というモノクローナル抗体製剤を予防のため用います。

クラミジア肺炎

乳児から認めますが、合宿や宿泊学習での水平感染で学童期に見受けられる無熱性肺炎です。クラミジアという細菌の一種が原因です。症状は、乳児では湿性咳嗽、喘鳴、多呼吸、幼児~学童では咽頭痛、喀痰、鼻炎などで、特異的な臨床像は乏しいとされます。マクロライド系抗生剤が有効です。

新型コロナウイルス肺炎

COVID-19ウイルス(SARS-2とも)による新型コロナウイルスの世界的流行感染症であり、2020年3月11日WHOはパンデミック宣言を行いました。現在、日本国内でも指定感染症扱いでありクラスター対策班が、クラスター早期探知、専門家派遣、データ収集解析、対応策検討を行っています。

37度5分以上の発熱、風邪のような咳、鼻水、倦怠感から発症し、中等症~重症例では呼吸苦や呼吸困難、間質性肺炎、重症呼吸障害へと進行します。診断は、臨床経過、胸部レントゲン、胸部CT、咽頭・鼻腔ぬぐい液PCR、などで行われます。嗅覚鈍麻、味覚異常、副鼻腔炎、髄膜炎などの合併が知られています。呼吸困難など重篤な換気障害は肺末梢でのサイトカインストームが原因と考えられています。治療方法やワクチンが確立していない為、感染防護が重要です。手洗い、マスク着用、密閉・密集・密接の三密を避ける、ことが重要です(詳細は厚労省HPなどをご参照ください)。